2023.09.04

食事・栄養

【病気・老化予防】抗炎症作用のある食べ物|やめるべき習慣とは?

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田中 康規

麻酔科医/ヘルスコーチ

炎症」と呼ばれる症状が、あらゆる健康トラブルを引き起こしたり、老化を促進するものであることはご存知ですか?

体内の炎症を放っておくと、将来、ガン糖尿病アルツハイマーなどの病になる確率が上がってしまいます。健康で美しい身体を長い間保つためには、炎症を抑える習慣は身につけておくべきと言えるでしょう。

今回は、炎症を抑える食べ物をご紹介するのはもちろん「炎症とは何なのか?」という基本的なことまで解説いたします。炎症が起こりやすい生活習慣もお伝えしますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

炎症の基礎知識

「炎症って、具体的にどんな状態なの?」という疑問をお持ちの方でもわかるように、基本的なことから解説いたします。

「炎症」とは?

炎症という言葉を聞くと、怪我をしたときの腫れや痛みを想像する方は多いと思います。実はこの「炎症」という現象の歴史はとても古いのです。紀元前3千年頃、古代エジプトでは既にパピルスの紙に炎症についての記載があります。

紀元1世紀頃になると、古代ローマ学者であるケルススが、炎症に共通して認める「発赤」「発熱」「疼痛」「腫脹」という特徴的な徴候を合わせて、「炎症の4主徴」と名付けました。

現在では、この4主徴に「機能障害」を加えたものを炎症と定義します。簡単に表現すると、炎症が起きた部位は、赤くなり、熱感をもち、痛みを伴い、腫れており、動かせない状態と言えます。

炎症とは本来生きていくうえで、あってしかるべき反応です。外界から体内に侵入した異物を排除し、その異物によって障害を受けた組織を掃除する役目があります。つまり、炎症は生体防御反応と組織の修復を担っているのです。

急性炎症と慢性炎症の違い

炎症は時として、正常な自己防衛反応ではなく、病気の原因にもなります。

急性炎症」であれば、経過が速やかで早期に反応は終息します。しかし、組織の障害が長期間に及んでいたり、炎症の原因となる異物や刺激がなかなか排除されないと、やがて炎症が長引いた「慢性炎症」の状態に陥ります。

慢性炎症を引き起こす原因としては、微生物の感染による「生物学的因子」、紫外線や放射線といった「物理的因子」、特定の化学物質による「化学的因子」などがあります。特に老化を加速させる「糖化ストレス」と「酸化ストレス」は、生活習慣病やガンといった加齢に関連する疾患の主たる原因となっています。

炎症を抑えることが長生きの秘訣

加齢に関連する疾患に共通しているのが、慢性炎症の存在です。老化に伴って慢性炎症が起きやすくなる背景には、内分泌系や代謝の変化といった「全身的要因」のほか、組織局所の細胞、微小環境の変化、免疫系の変化といった非常に様々な要因が寄与しています。

これまでの研究によると、百寿者(センテナリアン)と呼ばれるような長寿の方に共通している点に、慢性炎症の程度が低いことがあげられます。つまり、体内の炎症を抑えることができれば、健康トラブルを訴えることもなく、長寿を全うできる可能性も高いと言えます。

炎症は、どう抑えれば良いの?

炎症が起きたときに、その炎症を鎮める作用のことを「抗炎症作用」と言います。腫れ、発熱、痛みなどの急性炎症に対しては、ステロイド系抗炎症薬や、ロキソプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)によってこれらの症状を抑えることがあります。

それに対し、慢性炎症につながる体内の微小炎症を作らないためには「日々の食事の見直し」が重要です食事の内容によって、慢性炎症が起こりやすくなったり、抑制しやすくなったりすることがあるとされています。

今の体の不調や痛みを改善して、元気に日々を過ごして行きたい方は、炎症を抑えてくれる食べ物にどんなものがあるかを理解しておきましょう。

 

炎症を抑える食べ物

炎症を抑えてくれるのに役立つ食べ物をご紹介いたします。ぜひ、キッチンに常備するようにしてみてください。

ベリー系果実

ベリー類には、食物繊維に加えて抗酸化物質の「アントシアニン」が豊富に含まれています。この物質は、体内の炎症を抑制しガンのリスクを下げてくれる可能性が示唆されています。ベリー系果実は、抗炎症効果が期待できる優秀な食材です。

【アントシアニンが含まれるベリー類】
ブルーベリー、ラズベリー、ビルベリー、クランベリー、ブラックベリー、ボイセンベリー、カウベリー

エキストラバージンオリーブオイル

地中海沿岸諸国では、「長寿と健康の秘薬」と考えられているオリーブオイルは、その品質、トレーサビリティ(商品の生産から消費までの過程を追跡できること)、安全性を確保するために欧州連合が厳しい規制を課しています。

特に、抗菌・抗酸化・抗炎症作用を持つ「ポリフェノール」が豊富に含まれているエキストラバージンオリーブオイルの摂取は、炎症を和らげる効果があると言われています。

ナッツ類

アーモンド、カシューナッツ、くるみ、ピスタチオなどのナッツ類は、炎症作用を抑制する効果があるとする研究結果があります。

また、ルテオリン・ケルセチン・ルチンなどの多種類の「フラボノイド」が含まれており、炎症を抑える作用、抗酸化作用、ガン細胞の増殖を抑える作用など、健康を維持するために必要なさまざまな作用があることが証明されているのです。 

緑色の葉野菜

ケール、チンゲン菜、ほうれん草、ブロッコリーなど緑色の葉野菜には、「ビタミン(ビタミンA、C、E、K)」や「フィトケミカル(植物が紫外線や昆虫など植物にとって有害なものから体を守るために作り出された色素や香り辛味ネバネバなどの成分)」がたっぷり含まれているため、損傷などから細胞を守り炎症を抑制させる働きをしてくれます。 

ターメリック

ターメリックには炎症を抑える効果があるため、激しい運動をする方は積極的に摂った方が良い食材のひとつです。

ジムなどに行く際に、スポーツドリンクではなく手作りの「抗炎症ドリンク」を持っていくのもおすすめです。以下の材料を基本に、お好みの分量で調節してみてください。

  • 水 500ml
  • ターメリック 小さじ½
  • 塩 ひとつまみ
  • レモン お好みの分量

激しい運動による損傷を避けられないアスリートやトレーニングがお好きな方は、ターメリックを生活に取り入れる習慣を付けてみると良いでしょう。

オメガ3が豊富な魚

EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの「オメガ3脂肪酸」は、抗炎症作用、心臓血管系の保護作用があると言われています。また、オメガ3脂肪酸は視力の維持や脳神経の発達にも重要です。これらの脂肪酸は、私達の体において、恒常性を保つために必須であり、体内で合成することができません。そのため栄養として摂る必要があります。

オメガ3は、マグロ、サバ、さんまなどの青魚の他に、くるみやアーモンドのような種実類、アマ二油やエゴマ油などの植物油に多く含まれています。

しょうが・ニンニク

生の生姜に多く含まれる「ジンゲロール」という成分には、抗炎症作用があることが知られています。火を通すと、ジンゲロールという成分がショウガオールという成分に変わってしまいます。ショウガオールには、血流促進や体を温める作用がありますが、抗炎症作用を期待するのであれば、生の生姜がおすすめです。

また、ニンニクにも抗酸化作用、抗炎症作用があることが知られています。生姜やニンニクは、薬味や味付けのアクセントとして使用することが多いと思います。そのため、たくさん摂ることは難しいと思いますが知っておくと良さそうですね。

豆類

主に大豆に含まれるイソフラボンには、抗炎症作用があると言われています。炎症を起こす物質に、TNF−αという炎症系のサイトカインがあります。イソフラボンは、このサイトカインの過剰産生を抑制する働きを持っています。イソフラボンを含む大豆製品は、日常生活の中で比較的手軽に取り入れることができるため、意識して摂りましょう。

【イソフラボンを含む食べ物】
納豆、大豆飲料、油揚げ、大豆煮、きな粉、味噌

 

炎症が起こってしまう生活習慣

炎症を起こしてしまいやすい生活習慣をできるだけ避けることが、1番重要なことです。食べ物を取り入れる前に、以下の習慣をやめることから始めましょう。

運動不足、肥満

運動不足と食べ過ぎが原因と考えられる「内臓脂肪」も、慢性炎症の原因になると考えられています。適正な脂肪量であれば問題ありませんが、余分な内臓脂肪からは炎症物質が分泌されるのです。

内臓脂肪は内臓の毛細血管に近いことから、その炎症物質が血液を通って全身に回り、体内のあらゆる組織に幾度となく蓄積することで、それが慢性炎症の原因となります

出来る限り体を動かし、体に余分な脂肪が付くのを防ぐことで、慢性炎症を避けられるでしょう。

睡眠不足、ストレス

人工照明やインターネット(モニター画面からの光)が、慢性炎症を引き起こしていると言われています。特に、夜間の照明や光が、人に備わっている体内時計を狂わせ、睡眠リズムを乱しています。ただでさえ、現代人は睡眠時間が少ないのに、熟睡している時間がさらに短くなってしまうのです。

睡眠は炎症やストレスで傷ついた細胞を修復するための重要な手段です。こうした光が大切な睡眠を妨げていることも、慢性炎症の大きな原因といえます。

過度な飲酒、タバコ

タバコの煙には、多数の有害化学物質が含まれており、喫煙は全身の器官に悪影響をもたらします。その中でも、特に炎症を引き起こしやすいのが、直接タバコの煙にさらされることになる呼吸器系です。

肺炎、気管支炎、肺気腫、気管支喘息などのほとんどの呼吸器病が喫煙者に多く、とくに喫煙本数が多い人に高確率で発症しているという結果が出ています。

過度の飲酒は、腸に炎症を引き起こし、腸管透過性(食べ物が十分消化されずに、大きな分子のまま吸収されてしまい、食物アレルギーなどを悪化させる原因)を高める可能性があります。

https://possim.co.jp/preventive-medicine/uncategorized/668/

 

まとめ

多くの現代人が、忙しさにかまけて食事を手軽なファーストフードで済ませたり、睡眠時間を削ってストレスを溜めながら仕事をしたりしています。こうした生活は、知らず知らずのうちに体内で慢性炎症を引き起こしている可能性があります。

炎症が体にとってどんな影響を及ぼすのかを理解したら、それらを引き起こさない食生活や生活習慣を心がけてくださいね。

この記事の監修者

田中 康規 麻酔科医/ヘルスコーチ

 
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