
「ケトン体」という聞き慣れない成分が、ダイエットや糖尿病と関連していることを知り、気になったという方も多いでしょう。
「ダイエットにおいて重要な成分なのか?」「疾病を予防できるのか?」など、疑問に思うことはたくさんあると思います。
減量や予防にも大きく影響してくる成分ですので、この機会に理解し、健康的な体作りを行っていきましょう。
目次
「ケトン体」って何?
ケトン体とは何か、体に及ぼす影響はあるのかなどを解説いたします。
ケトン体って健康に良いの?
ケトン体とは、「アセトン」「アセト酢酸」「β-ヒドロキシ酪酸」の総称です。エネルギー源として、ブドウ糖を利用できない際に肝臓で産生されます。ケトン体は、絶食や高脂質・低糖質の食事で増加します。
炭水化物などの糖質を燃料とする代謝状態を「シュガーバーニング(糖質燃焼型)」、脂質を燃料としてケトン体を生成する代謝状態を「ファットバーニング(脂質燃焼型)」と呼びます。代謝の過程で、体に負担をかけないのは圧倒的に後者であり、多くの健康上の利点をもたらします。
ケトン体はダイエットに有効!
ケトン体が放出されて血液中に増加した状態を「ケトーシス」と呼びます。そして、体をファットバーニングに切り替える食事療法を「ケトジェニックダイエット」と言います。ケトジェニックダイエットでは、このケトーシスの状態が保たれます。
体をケトーシス状態にする戦略はいくつもありますが、脂肪摂取量を増やすことを重視することが基本です。総カロリーの60〜80%を脂肪から摂取し、残りのカロリーは非脂肪(タンパク質と炭水化物)から摂ることになります。
ケトン体は、糖尿病にどんな影響をもたらすの?
医療従事者の中でさえ、「ケトン体は危険」と勘違いしている人がいるのも事実です。実際、ケトン体が増えると、血液が大きく酸性に傾き、「ケトアシドーシス」という重篤な状態を引き起こすからです。
例えば、重症糖尿病ではブドウ糖を十分に利用できないため、ケトン体が大量に産生されます。その結果、稀に糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こします。
しかし、一般の健常人がケトジェニックダイエットをしてもケトアシドーシスを引き起こす心配はありません。なぜなら、ケトン体が増えても、それほど血液は酸性に傾かず、健全な「生理的ケトーシス」になるからです。
ケトン体に期待されるメリット
ケトン体が、人にとって良い影響を及ぼすと考えられる理由をご紹介いたします。
悪性腫瘍・神経変性疾患の改善
一般的に、ガン細胞はエネルギー源をブドウ糖に頼っています。ブドウ糖の利用ができなくなったガン細胞は弱り、正常の細胞はケトン体を利用して活動を続けることができます。また、ケトン体はてんかんや、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患においても有効です。
なぜなら、脳の神経細胞はケトン体も重要なエネルギー源だからです。ケトン体は、脳神経のエネルギー代謝を改善します。さらに、活性酸素や炎症から神経細胞を保護する作用などによって、脳神経障害を抑制できるという研究報告もあります。
このように悪性腫瘍、てんかん、アルツハイマー病などの神経変性疾患において、ケトン体は疾患の予防や改善が期待できます。
寿命が伸びる可能性
寿命が伸びる可能性が期待できるのは、代謝と長寿に関連した研究により、長寿に関連する遺伝子がケトン体産生を制御している酵素活性に影響していると言われているからです。
また、マウスに脂肪を多く含み炭水化物の少ない食事をさせたところ、平均寿命が13%も伸びたという研究もあり、これは人間では7〜10年に相当します。ケトン体を生成するケトジェニックダイエットが、寿命や健康に対して重要な影響をもたらすかもしれません。
ケトン体ダイエットの方法
ケトン体を生成する食事療法を、「ケトジェニックダイエット」と呼びます。その方法について解説していきます。
積極的に食べるべき食品
ケトジェニックダイエットでは、炭水化物の摂取を1日あたり約20〜50gに制限し多くの健康的な脂肪やタンパク質、ときおり発酵食品を食べる事を重視します。
タンパク質 | 自然環境で育てられた牧草牛、鶏肉、豚肉、平飼いの卵 |
健康的なアブラ | MCTオイル、エクストラバージンオリーブオイル、ココナッツオイル、アボカドオイル、グラスフェッドバター、ギー |
低炭水化物の野菜 | 緑の野菜、トマト、たまねぎ、ネギ、ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、大根、アスパラガス、アーティチョーク、セロリ、ニンニク |
血糖を高めにくい果物 | グレープフルーツ、ベリー系果実、青リンゴ、アボカド |
調味料 | 塩、こしょう、味噌(発酵食品) |
ハーブ、香辛料 | バジル、オレガノ、タイム、ローズマリー、ターメリック、シナモン、生姜ハーブ、香辛料 |
食べない方が良い食品
成分表示のラベルを常に確認し、不健康な油、人工甘味料、砂糖などが過剰に入っている食品は避けるようにしましょう。
加工植物油 | サラダ油、ドレッシング、マヨネーズ |
加工食品 | 炭酸飲料、ジュース、アイスクリーム、お菓子 |
穀物またはデンプン | 小麦、米、パスタ、シリアル |
豆類 | エンドウ豆、インゲン豆、レンズ豆、ひよこ豆 |
根菜 | じゃがいも、さつまいも、にんじん |
アルコール | ビール、ワイン、お酒を混ぜた飲み物 |
ダイエットを行う期間は?
ケトジェニックダイエットを始めたばかりの人は、体がケトーシス状態になるまで少なくとも2〜4週間は継続することをおすすめします。
筋肉中のグリコーゲンを定期的に補充しないといけないアスリートの方などは、炭水化物を普段より多めに摂る日(チートデイ)を設けても良いでしょう。
ダイエット目的の人は、通常の方法のまま続けて体調の変化を観察しながら継続してください。
自分が「ケトン体」かを確かめる方法
自分がケトン体を多く産生し、脂質をエネルギー源にできているかどうかを判断する方法は以下になります。
空腹感で判断する
体が脂肪をより効率的に燃焼するにつれ、空腹感が軽減されていくことを感じるでしょう。
尿意で判断する
体が過剰なナトリウムとアセト酢酸を排泄している可能性があり、より頻繁に尿意を催すことがあります。
息や汗の状態で判断する
アセトンの影響で、息や汗がマニキュアや果実のような臭いになることがあります。
まとめ
「ケトン体」の基本知識や、ダイエットや糖尿病などの疾病とどのように関連しているのかがご理解いただけたと思います。
体に悪い成分というイメージが強い方もいるかもしれませんが、さまざまな研究により減量や疾病の改善に一役買うものとして注目されるようになりました。
今後のダイエット計画や、疾病予防・改善に役立つと言われているケトン体。無理のない範囲内で、ご紹介した食事療法を取り入れてみてはいかがでしょうか。